終末期ケア専門士 7日間学習プログラム
【4日目】意思決定の支援
(アドバンス・ケア・プランニング)
📚1〜3日目の振り返り(5分復習)
| 日 | テーマ | 重要ポイント |
|---|---|---|
| 1日目 | 基本的な考え方 | 本人の気持ち最優先、その人らしさ |
| 2日目 | 苦しみへの対応 | 4つの苦しみ、観察と報告 |
| 3日目 | コミュニケーション | 傾聴、沈黙10秒、話す:聞く=3:7 |
昨日から実践できていますか?
- 相手の言葉を繰り返す(オウム返し)
- 10秒の沈黙を守る
- 感情を言葉にする
→ 今日は最も重要で実践的な内容です!
今までの技術を全て使います。
本人と家族の「これから」について、
一緒に考え、希望を引き出せるようになる
💭1. ACP(アドバンス・ケア・プランニング)とは?
専門用語を使わずに説明すると
「もしものときに備えて、
本人が何を大切にしたいか、
どう過ごしたいかを、
本人・家族・医療者で話し合うこと」
🌸よく「人生会議」と呼ばれます
人生の最終段階をどう過ごすかについて、みんなで考える会議のようなもの
ACPは「一度きりの話し合い」ではない
│ 体調が良いとき │
│ ↓ │
│ 少し悪くなったとき │
│ ↓ │
│ さらに悪化したとき │
│ ↓ │
│ 最期が近づいたとき │
└─────────────────┘
↑
それぞれのタイミングで
何度も話し合う
だから、何度も繰り返し話し合うことが大切
❓2. なぜACPが必要なのか
😢よくある悲しいケース
状況:急に容態が悪化し、本人が意思表示できなくなった
家族:「本人がどうしたいか聞いていなかった…」
医師:「心臓マッサージはしますか?人工呼吸器は?」
家族:「わかりません…本人なら何て言うだろう…」
→ 家族は「これで良かったのか」と一生悩み続ける
😊ACPをしていた場合
本人の言葉(事前に話していた):
「苦しい治療はしたくない。家族と穏やかに過ごせたらいい」
家族:「本人の希望通りにしよう」
医師:「わかりました。苦痛を和らげることに専念します」
→ 家族は「本人の希望を叶えられた」と思える
ACPのメリット
| 本人 |
|
|---|---|
| 家族 |
|
| 医療者 |
|
⏰3. ACPを始めるタイミング
⚠️よくある誤解
「もう終わりだから話し合う」← これは間違い!
⭕正しい考え方
元気なときから少しずつ話し合う
具体的なタイミング
早期(まだ元気なとき)
- 「これから先、どんなふうに過ごしたいですか?」
- 「大切にしたいことは何ですか?」
- 軽い雑談のように
中期(少し体調が悪くなってきたとき)
- 「もし、これから体調が悪くなったら、どこで過ごしたいですか?」
- 「どんなことはしたくないですか?」
- 具体的に聞き始める
後期(終末期に入ったとき)
- 「苦しくなったとき、どうしてほしいですか?」
- 「心残りなことはありますか?」
- 最期の希望を確認
「死」という言葉を使わなくてもいい。
「もしものとき」「これから先」という言葉で十分。
💬4. ACPの話し始め方(実践的な声かけ)
① 雑談から自然に入る方法
あなた:
本人:
あなた:
あなた:
✨この方法のポイント:
- いきなり重い話にしない
- 日常の会話から自然につなげる
- 「これから」という言葉を使う
② 具体的な切り出し文例集
体調について触れるとき
- 「体調が少し変わってきましたが、今、どんなことが気になりますか?」
- 「今は○○ですが、もし△△になったら、どうしたいですか?」
- 「これからのことで、不安なことはありますか?」
場所について聞くとき
- 「ここでの生活はどうですか?」
- 「もし選べるなら、どこで過ごしたいですか?」
- 「家に帰りたいと思うことはありますか?」
価値観を聞くとき
- 「○○さんにとって、一番大切なことは何ですか?」
- 「どんなふうに過ごせたら、○○さんらしいと思いますか?」
- 「やっておきたいこと、会いたい人はいますか?」
❌ 避けるべき聞き方
- 「心臓が止まったら蘇生しますか?」← いきなり過ぎる
- 「延命治療はどうしますか?」← 言葉が難しい
- 「もう長くないですが…」← 絶望させる
- 「早く決めてください」← 急かす
👂5. ACPで聞くべき7つのこと
全部一度に聞く必要はありません
何度かの会話に分けて、少しずつ聞いていきます
① 価値観・大切にしていること
質問例:
- 「○○さんにとって、一番大切なことは何ですか?」
- 「人生で大事にしてきたことは何ですか?」
- 「どんなときに幸せを感じますか?」
📝本人の答え例:
- 「家族と一緒にいること」
- 「自分のことは自分でできること」
- 「人に迷惑をかけないこと」
- 「痛みがないこと」
- 「自然を感じること」
② 過ごしたい場所
質問例:
- 「これから先、どこで過ごしたいですか?」
- 「家と病院と施設、それぞれどう思いますか?」
- 「最期はどこで迎えたいですか?」
| 場所 | メリット | 考慮点 |
|---|---|---|
| 自宅 |
|
|
| 病院 |
|
|
| 施設 |
|
|
③ 治療についての希望
⚠️注意:医療用語は使わない
「心肺蘇生」「人工呼吸器」などの言葉は難しい
- 「もし、心臓や呼吸が止まったとき、胸を押したり、機械をつけたりしますか?」
- 「苦しい治療と、穏やかに過ごすこと、どちらを選びますか?」
- 「痛みを取ることと、意識がはっきりしていること、どちらが大事ですか?」
説明するときのコツ
良い説明:
「心臓が止まったとき、胸を強く押し続けたり、電気ショックをすることができます。でも、体に負担が大きく、骨が折れることもあります。それでも元気になる可能性は低いです」
→ メリット・デメリット両方を正直に伝える
④ 食事について
質問例:
- 「もし、口から食べられなくなったら、どうしたいですか?」
- 「点滴や管で栄養を入れることもできますが、どう思いますか?」
- 「少しでも好きなものを口にできる方がいいですか?」
選択肢を提示する
| 方法 | 説明 |
|---|---|
| 口から食べる | 好きなものを、食べられる分だけ |
| 点滴 | 腕から栄養を入れる。量は限られる |
| 経管栄養 | 鼻や胃に管を入れる。しっかり栄養が取れる |
| 何もしない | 自然に任せる |
⑤ 会いたい人・伝えたいこと
質問例:
- 「もう一度会いたい人はいますか?」
- 「誰かに伝えておきたいことはありますか?」
- 「やり残したことはありますか?」
💝この質問の意味
人生の整理をするチャンス
- 和解したい人がいるかも
- 感謝を伝えたいかも
- 謝りたいことがあるかも
→ サポートできることがあれば手伝う
⑥ 家族への思い
質問例:
- 「ご家族に何か伝えておきたいことはありますか?」
- 「ご家族のことで心配なことはありますか?」
- 「ご家族にどうしてほしいですか?」
⑦ 希望すること・したくないこと
質問例:
- 「絶対にしてほしいことはありますか?」
- 「絶対にしたくないことはありますか?」
- 「どんな最期を迎えたいですか?」
📝よくある答え
してほしいこと:
- 「家族に囲まれたい」
- 「好きな音楽を聴きたい」
- 「痛みを取ってほしい」
- 「自然の光を感じたい」
したくないこと:
- 「苦しい思いはしたくない」
- 「管だらけになりたくない」
- 「家族に迷惑をかけたくない」
- 「意識がなくなるのは嫌」
👨👩👧👦6. 家族との話し合い方
家族も一緒に考える
ACPは本人だけでなく、家族も参加することが大切
家族との話し合いの進め方
本人の気持ちを家族に伝える許可をもらう
家族と本人を一緒に話し合いの場に
本人から話してもらう
家族の気持ちも聞く
調整役になる
本人と家族の意見が違うとき
😣よくあるパターン
本人:「もう治療はいいから、家に帰りたい」
家族:「でも、家では心配です。病院にいてほしい」
⭕ 対応の仕方
両方の気持ちを受け止める
「ご家族は、○○さんのことが心配なんですね」(家族に)
それぞれの理由を聞く
「何が一番心配ですか?」(家族に)
妥協点を探る
「訪問看護を入れて、家でも医療サポートを受けられるようにするのはどうですか?」
時間をかける
❌ やってはいけないこと
- 家族の意見を優先してしまう
- 「本人のためだから」と家族を説得してしまう
- どちらかの味方になってしまう
- すぐに決めさせようとする
📋7. ACPの記録と共有
話し合った内容は必ず記録する
口約束だけでは忘れてしまったり、誤解が生じたりする
記録するべきこと
ACPシート(記録項目)
- いつ話し合ったか
- 誰と話し合ったか(本人、家族、医療者)
- 本人が大切にしていること
- 希望する過ごし方・場所
- 希望する治療・したくない治療
- もしものときの希望
- 家族への思い
- 次回、話し合う予定
💡記録のコツ
- 本人の言葉をそのまま書く(「家族と穏やかに」など)
- 「〇〇と言っていた」ではなく「〇〇と希望している」
- 家族の意見も一緒に書く
- 迷っていることも書く(決まってなくてOK)
記録の共有
⚠️重要:情報共有
ACPの内容は、関わる全員が知っておく必要がある
- 医師
- 看護師
- 介護スタッフ
- 家族
- 本人(コピーを渡す)
🔄8. 気持ちが変わったとき
気持ちが変わるのは当たり前!
📝よくあるケース
3ヶ月前:
「もう治療はいいです。自然に任せたい」
今:
「やっぱり、もう少し頑張りたい。治療してほしい」
⭕ 対応
気持ちの変化を受け入れる
何が変わったか聞く
「どうしてそう思うようになったのですか?」
記録を更新する
関係者に共有する
❌ やってはいけないこと
- 「前は違うこと言ってましたよね」と責める
- 「もう決めたでしょう」と変更を認めない
- 「また変わるかもしれない」と無視する
💭9. 意思が確認できなくなったとき
突然、本人が話せなくなったら?
意識がなくなる、認知症が進むなど
対応の優先順位
事前に話し合った内容を確認
「○○さんは、こう希望していました」
家族に確認する
「普段、こんなことを言っていませんでしたか?」
本人の価値観から推測する
だから、きっと家族の負担にならない方を選ぶのではないでしょうか」
医療者と家族で話し合う
💡だから事前のACPが重要
話し合っておけば、本人が話せなくなっても、
本人の希望に沿った対応ができる
🗣️10. 難しい質問への答え方
質問① 「あとどれくらい生きられますか?」
❌ 避けるべき答え
- 「あと○ヶ月です」(断言はできない)
- 「わかりません」だけ(冷たい)
- 「まだまだ大丈夫ですよ」(嘘)
⭕ 良い答え方
まず気持ちを聞く
正直に、でも優しく
今できることに目を向ける
質問② 「家族に言わないでほしい」
😣困る状況
本人:「自分の本当の状態を家族に言わないでほしい」
⭕ 対応
理由を聞く
「何か心配なことがあるのですか?」
家族に伝えるメリットを説明
知っていれば、○○さんのためにできることがあるかもしれません」
段階的に伝える提案
本人の気持ちを最優先
でも、気が変わったら、いつでも言ってくださいね」
質問③ 「もう何もしたくない」
⭕ 対応
受け止める
今の気持ちを聞く
「何もしたくないと思うくらい、疲れているんですね」
小さな希望を探る
医療職に相談
📝11. 4日目のまとめ
ACPとは:
- ✅ もしものときに備えて、本人の希望を聞いておくこと
- ✅ 一度きりではなく、何度も話し合う
- ✅ 本人・家族・医療者みんなで考える
ACPで聞く7つのこと:
- 価値観・大切にしていること
- 過ごしたい場所
- 治療についての希望
- 食事について
- 会いたい人・伝えたいこと
- 家族への思い
- 希望すること・したくないこと
大切なこと:
- ✅ 気持ちは変わる(変わって当たり前)
- ✅ 本人の気持ち最優先
- ✅ 家族との調整も大切
- ✅ 必ず記録して共有する
「もしものとき」ではなく
「これから先」という言葉で話す
🎯12. 明日からの実践課題
必ず1日1回はやること
- 「これからどう過ごしたいですか?」と聞く
- 本人の価値観を1つ見つける
- 聞いた内容をメモする
チャレンジ課題
- 家族と一緒に話す機会を作る
- 「もしものとき」について少しだけ触れる
- ACPシートを作ってみる
やってみよう:ロールプレイ
同僚と練習:
- 一人が本人役、一人がケア提供者役
- 「これからのことで気になることはありますか?」
- → どう答えるか、どう対応するか練習
振り返りメモ(1日の終わりに)
今日の会話で:
- 本人の価値観で気づいたこと:
- 聞けたこと・聞けなかったこと:
- 明日聞いてみたいこと:
💭今日の振り返り(2分)
- ACPの意味を理解できましたか?
- 「これから先、どう過ごしたいか」聞けましたか?
- 本人の価値観を1つ見つけられましたか?
🎉4日間、本当にお疲れ様でした!🎉
もう半分以上!
今日は特に重要で難しい内容でしたが、
しっかり理解できましたね!
残り3日間も一緒に頑張りましょう!

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