終末期ケア専門士 7日間学習プログラム
【3日目】コミュニケーションの技術
📚1・2日目の振り返り(5分復習)
1日目:基本的な考え方
- ✅ 「治す」→「支える」
- ✅ 本人の気持ち最優先
- ✅ その人らしさを大切に
2日目:苦しみへの対応
- ✅ 4つの苦しみ(体・心・社会・霊的)
- ✅ 痛みのサイン観察
- ✅ 具体的な報告の仕方
できていますか?
- 朝の「痛みや苦しさ」確認
- 表情の観察
- 気づきのメモ
→今日からはさらに「伝わる対話」を学びます!
🎯【3日目の目標】
本人が「話してよかった」と思えるコミュニケーションができるようになる
本人が「話してよかった」と思えるコミュニケーションができるようになる
💡1. なぜコミュニケーションが重要なのか
終末期の方が一番求めていること
| 順位 | 内容 |
|---|---|
| 1位 | 話を聞いてほしい |
| 2位 | そばにいてほしい |
| 3位 | 自分を理解してほしい |
✨大切な真実
- 医療行為よりも「誰かが聞いてくれる」ことで苦しみが和らぐ
- 話すことで、自分の気持ちが整理できる
- 「一人じゃない」と感じられる
🌟2. 信頼される5つの基本姿勢
① 目線を合わせる
⭕ 良い例
座っている本人
↓
[あなた] ← しゃがむ、椅子に座る
同じか少し低い目線
↓
[あなた] ← しゃがむ、椅子に座る
同じか少し低い目線
❌ 悪い例
座っている本人
↑
立ったまま見下ろす ← 威圧的に感じる
↑
立ったまま見下ろす ← 威圧的に感じる
実践ポイント:
- ベッドなら腰を下ろす
- 車椅子ならしゃがむ
- 立って話すのは最長1分まで
② 適切な距離感
| 関係性 | 距離 | 備考 |
|---|---|---|
| 親しい関係 | 45cm~1m | 手が届く距離 |
| まだ慣れていない | 1m~1.5m | 徐々に近づく |
🤝触れる場合の許可の取り方:
- 「もう少し近くに座ってもいいですか?」
- 「手を握ってもいいですか?」
→ 許可を取ることで安心感が生まれます
③ 体の向きと姿勢
⭕ 良い姿勢
本人
│
/ \
[あなた] ← 体を向ける
手は膝の上(開いた姿勢)
│
/ \
[あなた] ← 体を向ける
手は膝の上(開いた姿勢)
⚠️避ける姿勢:
- ❌ 腕組み → 拒否的に見える
- ❌ 足組み → リラックスしすぎ
- ❌ 体をそらす → 関心がないように見える
- ❌ スマホや時計を見る → 「早く終わらせたい」と思われる
④ 表情と声のトーン
表情:
- 穏やかな表情(作り笑いは不要)
- 相手の表情に合わせる
- 悲しい話 → 一緒に悲しむ表情
- 嬉しい話 → 一緒に笑顔
声:
- 少しゆっくり
- 少し低めのトーン(落ち着き)
- 大きすぎず、小さすぎず
- 語尾まではっきりと
NGな声:
- ❌ 高い声で「元気出して〜!」
- ❌ 早口
- ❌ 子ども扱いする話し方
⑤ 時間を確保する
| 会話の種類 | 必要な時間 |
|---|---|
| 軽い会話 | 3〜5分 |
| 深い話 | 15〜30分 |
❌ 悪い例
「ちょっと今忙しいので後で」
⭕ 良い例
「大切なお話ですね。○時に戻ってきて、ゆっくりお話を聞かせてください」
→ 必ず戻る!
👂3. 傾聴の技術(実践編)
傾聴とは?
聴く=耳+目+心
ただ聞くのではなく、全身で受け止める
技術① うなずき・相づち
効果的なタイミング:
本人「最近、夜が不安で…」
あなた(うなずく)
本人「眠れなくて」
あなた「そうなんですね」(ゆっくり)
本人「昼間は大丈夫なんですけど」
あなた(うなずく)
あなた(うなずく)
本人「眠れなくて」
あなた「そうなんですね」(ゆっくり)
本人「昼間は大丈夫なんですけど」
あなた(うなずく)
相づちのバリエーション:
- 「そうなんですね」
- 「それは…」
- 「うんうん」
- 「ええ」
- 「○○なんですね」(繰り返し)
NGな相づち:
- ❌ 「へぇ〜」(軽い印象)
- ❌ 「ふ〜ん」(興味なさそう)
- ❌ 早すぎる相づち(聞いてない印象)
技術② 繰り返し(オウム返し)
⭕ 基本のやり方
例1
本人:「痛くて眠れなかった」
あなた:「痛くて眠れなかったんですね」
本人:「痛くて眠れなかった」
あなた:「痛くて眠れなかったんですね」
例2
本人:「家族に迷惑をかけているようで…」
あなた:「迷惑をかけているように感じるんですね」
本人:「家族に迷惑をかけているようで…」
あなた:「迷惑をかけているように感じるんですね」
✨効果:
- 「ちゃんと聞いてくれている」と伝わる
- 本人が自分の気持ちを再確認できる
- 次の言葉を引き出せる
コツ:
- 全部繰り返さなくてOK
- キーワードだけ繰り返す
- 語尾を「〜んですね」にする
技術③ 気持ちを言葉にする
感情の名前をつける:
本人:「もう何もできなくなって…」
(下を向いて小さな声)
(下を向いて小さな声)
あなた:「悲しい気持ちなんですね」
または
「つらいですね」
よく使う感情の言葉:
- つらい、悲しい、寂しい
- 不安、怖い、心配
- 申し訳ない、情けない
- 悔しい、腹立たしい
- 嬉しい、ありがたい
⚠️注意点:
- 決めつけない(「〜と感じますか?」で確認)
- 否定しない
技術④ 沈黙を怖がらない
良い沈黙(守るべき):
- 考えている
- 涙をこらえている
- 次の言葉を探している
→ 10秒は待つ
沈黙中にすること:
- 穏やかな表情で待つ
- そっと手を握る
- うなずく
- 一緒に外を眺める
やってはいけないこと:
- ❌ すぐに話題を変える
- ❌ スマホを見る
- ❌ 「何か話してください」と急かす
技術⑤ 開かれた質問
| 閉じた質問 (答えがYes/No) |
開かれた質問 (話が広がる) |
|---|---|
| 「痛いですか?」 →「はい」で終わる |
「どんな痛みですか?」 → 詳しく話せる |
| 「眠れましたか?」 →「いいえ」で終わる |
「夜はどんな感じでしたか?」 → 状況を話せる |
✨魔法の質問:
- 「もう少し詳しく教えてもらえますか?」
- 「それについて、どう感じていますか?」
- 「他に何かありますか?」
🚨4. 難しい場面での対応
場面① 「もう死にたい」と言われたら
❌ 避けるべき対応:
- 「そんなこと言わないで!」
- 「まだ大丈夫ですよ」
- 「家族が悲しみますよ」
→ 本人の気持ちを否定している
⭕ 良い対応:
1
受け止める
「そう感じているんですね」
(否定しない、驚かない)
受け止める
「そう感じているんですね」
(否定しない、驚かない)
2
気持ちを聞く
「それはとてもつらいですね。何が一番つらいですか?」
気持ちを聞く
「それはとてもつらいですね。何が一番つらいですか?」
3
寄り添う
「一人で抱えなくていいですよ。一緒に考えましょう」
寄り添う
「一人で抱えなくていいですよ。一緒に考えましょう」
4
医療職に相談
(うつ状態の可能性)
医療職に相談
(うつ状態の可能性)
理解すべきこと:
- 「死にたい」=「今のつらさから解放されたい」
- 否定すると余計に孤独になる
- 話せただけで楽になることもある
場面② 「治りますか?」と聞かれたら
❌ 避けるべき対応:
- 「大丈夫、治りますよ」(嘘)
- 「それは先生に聞いてください」(逃げ)
- 「わかりません」だけ(冷たい)
⭕ 良い対応:
1
まず聞く
「病気のことが心配なんですね。どんなことが気になりますか?」
まず聞く
「病気のことが心配なんですね。どんなことが気になりますか?」
2
正直に、優しく
「私からは病気のことは詳しくお伝えできないのですが、先生にしっかり聞いておきますね」
正直に、優しく
「私からは病気のことは詳しくお伝えできないのですが、先生にしっかり聞いておきますね」
3
不安に寄り添う
「不安な気持ち、よくわかります。何か他に心配なことはありますか?」
不安に寄り添う
「不安な気持ち、よくわかります。何か他に心配なことはありますか?」
⚠️原則:
- 嘘はつかない
- 知らないことは正直に言う
- でも、突き放さない
- 不安な気持ちは受け止める
場面③ 怒りをぶつけられたら
理解すること:
- 怒りの裏には「恐怖」「悲しみ」がある
- あなた個人への怒りではない
- 感情のはけ口が必要
対応の手順:
1
まず受け止める
(反論しない、言い訳しない)
「お怒りなんですね」
まず受け止める
(反論しない、言い訳しない)
「お怒りなんですね」
2
謝罪(必要なら)
「不快な思いをさせて申し訳ありません」
謝罪(必要なら)
「不快な思いをさせて申し訳ありません」
3
傾聴
「どんなことが嫌でしたか?」
傾聴
「どんなことが嫌でしたか?」
4
できることを提案
「○○については改善できます」
できることを提案
「○○については改善できます」
5
気持ちを聞く
(少し落ち着いてから)
「他に何か心配なことはありますか?」
気持ちを聞く
(少し落ち着いてから)
「他に何か心配なことはありますか?」
🛡️自分を守ることも大切:
- 暴言・暴力は我慢しない
- すぐに離れて、上司に相談
- 一人で抱え込まない
場面④ 泣かれたとき
❌ 避けるべき対応:
- 「泣かないで」
- 「元気出して」
- 「大丈夫ですよ」
→ 泣くことを止めてしまう
⭕ 良い対応:
1
黙って寄り添う
黙って寄り添う
- ティッシュを渡す
- そっと背中に手を当てる
- 落ち着くまで待つ
2
声をかける
「つらいですね」
「泣いていいんですよ」
声をかける
「つらいですね」
「泣いていいんですよ」
3
話したくなるまで待つ
「落ち着いたら、お話聞きますね」
話したくなるまで待つ
「落ち着いたら、お話聞きますね」
知っておくこと:
- 泣くことは悪いことではない
- 感情を出せることは健康的
- 泣いた後は少し楽になる
🧠5. 認知症の方とのコミュニケーション
基本原則
理解すべきこと:
- 記憶は曖昧でも、感情は残る
- 否定されると傷つく
- 安心感が最も大切
① 現実に引き戻さない
❌ 悪い例
本人:「息子が迎えに来るの」(亡くなっている)
あなた:「息子さんは亡くなったでしょう」
本人:「息子が迎えに来るの」(亡くなっている)
あなた:「息子さんは亡くなったでしょう」
⭕ 良い例
本人:「息子が迎えに来るの」
あなた:「息子さん、楽しみですね。どんな方ですか?」
→ 気持ちに寄り添う
本人:「息子が迎えに来るの」
あなた:「息子さん、楽しみですね。どんな方ですか?」
→ 気持ちに寄り添う
② 短く、シンプルに話す
❌ 悪い例
「お食事の時間ですが、今日のメニューはお魚で、煮付けになっています。召し上がりますか?」
「お食事の時間ですが、今日のメニューはお魚で、煮付けになっています。召し上がりますか?」
⭕ 良い例
「ご飯の時間ですよ。お魚ですよ」
→ 一文を短く
「ご飯の時間ですよ。お魚ですよ」
→ 一文を短く
③ ジェスチャーを使う
- 「座ってください」→ 手で椅子を指す
- 「飲んでください」→ コップを口元に
- 言葉+動作
④ 同じことを何度聞かれても
❌ 悪い例
「さっき言いましたよね」
「さっき言いましたよね」
⭕ 良い例
初めて聞かれたように答える
「○時ですよ」(何度でも優しく)
初めて聞かれたように答える
「○時ですよ」(何度でも優しく)
⑤ 不安を先取りする
- 「トイレはこちらですよ」(定期的に案内)
- 「ここにいますからね」(離れるとき)
- 「すぐ戻りますね」(必ず戻る)
👨👩👧👦6. 家族とのコミュニケーション
家族も支援の対象
家族の心理状態:
- 疲労困憊
- 罪悪感(十分できていないと思う)
- 悲しみの準備(予期悲嘆)
- イライラ、怒り
- 無力感
効果的な声かけ
❶ 労をねぎらう
- 「いつも○○さんのそばにいてくださってありがとうございます」
- 「本当によく頑張っておられますね」
- 「お疲れ様です。少し休まれてください」
❷ 具体的に褒める
△
「よくやってますね」(漠然としている)
「よくやってますね」(漠然としている)
⭕
「さっきの声かけ、とても優しくて○○さんも嬉しそうでしたよ」
「さっきの声かけ、とても優しくて○○さんも嬉しそうでしたよ」
❸ 選択肢を提示
❌
「どうしますか?」(困る)
「どうしますか?」(困る)
⭕
「AとB、どちらがいいと思いますか?」
または
「こうするのはどうでしょう?」
「AとB、どちらがいいと思いますか?」
または
「こうするのはどうでしょう?」
❹ 罪悪感を軽減
家族:「もっと何かできないかと…」
あなた:「○○さん、ご家族がそばにいてくれるだけでとても安心されていますよ。それが一番大切なことです」
✅7. 今日から実践!コミュニケーションチェックリスト
会話前の準備(10秒)
- 時計・スマホをしまう
- 深呼吸して心を落ち着ける
- 笑顔(穏やかな表情)を作る
会話中(常に意識)
- 目線を合わせる(同じ高さ)
- 体を向ける
- うなずき・相づち
- 繰り返し
- 沈黙を待つ(10秒)
- 感情を言葉にする
会話後(振り返り)
- 本人の気持ちを理解できたか
- 最後まで聞けたか
- アドバイスばかりしなかったか
📊8. よくある失敗と改善
失敗例① 話しすぎ
❌ 悪い例
本人:「不安で…」
あなた:「そういうときは○○して、△△もいいですし、私の経験では××で…」
→ 本人が話せない
本人:「不安で…」
あなた:「そういうときは○○して、△△もいいですし、私の経験では××で…」
→ 本人が話せない
⭕ 改善
本人:「不安で…」
あなた:「不安なんですね…」(沈黙)
本人:「夜が特に…」
あなた:「夜が不安なんですね」
本人:「不安で…」
あなた:「不安なんですね…」(沈黙)
本人:「夜が特に…」
あなた:「夜が不安なんですね」
→ 話す:聞く = 3:7
失敗例② すぐに解決しようとする
❌ 悪い例
本人:「家族に申し訳ない」
あなた:「そんなことないですよ!家族も喜んでやってますよ」
→ 気持ちを否定
本人:「家族に申し訳ない」
あなた:「そんなことないですよ!家族も喜んでやってますよ」
→ 気持ちを否定
⭕ 改善
本人:「家族に申し訳ない」
あなた:「申し訳ないと感じているんですね」(沈黙)
本人:「迷惑ばかりで…」
あなた:「そう感じてしまうんですね」
→ まず受け止める(解決は後)
本人:「家族に申し訳ない」
あなた:「申し訳ないと感じているんですね」(沈黙)
本人:「迷惑ばかりで…」
あなた:「そう感じてしまうんですね」
→ まず受け止める(解決は後)
失敗例③ 励まししすぎ
❌ 悪い例
本人:「もうダメかも…」
あなた:「頑張って!負けないで!」
本人:「もうダメかも…」
あなた:「頑張って!負けないで!」
⭕ 改善
本人:「もうダメかも…」
あなた:「そう感じているんですね。とてもつらいですよね」
本人:「もうダメかも…」
あなた:「そう感じているんですね。とてもつらいですよね」
📝9. 3日目のまとめ
コミュニケーションの基本姿勢:
- ✅ 目線を合わせる
- ✅ 体を向ける
- ✅ 時間を確保する
- ✅ 穏やかな表情と声
傾聴の技術:
- ✅ うなずき・相づち
- ✅ 繰り返し(オウム返し)
- ✅ 感情を言葉にする
- ✅ 沈黙を待つ(10秒)
- ✅ 開かれた質問
難しい場面:
- ✅ 否定しない、受け止める
- ✅ 嘘はつかない、でも冷たくしない
- ✅ まず聞く、解決は後
黄金比:話す:聞く = 3:7
🎯10. 明日からの実践課題
必ず1日1回はやること
- 「今日はどんな気持ちですか?」と聞く
- 相手の言葉を繰り返す(オウム返し)
- 10秒の沈黙を守る
チャレンジ課題
- 会話中にスマホ・時計を見ない
- 「頑張って」を言わず、代わりの言葉を使う
- 家族に具体的に声をかける
振り返りメモ(1日の終わりに)
今日の会話で:
- うまくできたこと:
- 難しかったこと:
- 明日改善したいこと:
💭今日の振り返り(2分)
- 今日、10秒の沈黙を守れましたか?
- 相手の言葉を繰り返せましたか?
- 「話す:聞く」の比率はどうでしたか?
🎉3日間、本当にお疲れ様でした!🎉
半分近くまで来ました。
着実に実践力がついています!
明日も一緒に学びましょう!

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